「黄瀬君ってピアスとか似あいそうですよね。」
それをぼそりと呟いたのは、水色で影の薄い彼だった。
その彼に、青春特有の感情を抱いている身としては、動かずにはいられない。
「そ、そうっスか?」
この時、帰りにピアッサーを買おうと決意するまで、約5秒。
《赤いピアス》
ピアス。
それは耳に穴をあけること。
たまに、鼻やへそなどにもあける人がいる。
勢いでピアッサーを買った。
が、しかし、説明書を読んで、それを理解しても、実行に移す勇気が出るはずもなく。
さっきまでの勢いは、とうになくなっていた。
『黄瀬君ってピアスとか似あいそうですよね。』
頭の中で彼がまた呟いた。
自分よりかなり小さい体で、すごい力を持っていて、
色素の薄い瞳を自分に向けて、その小さい唇でそう言ったことを思い出す。
がっくりと肩を落とす。
自分は、やっぱり彼に恋をしているんだ。
うん。
再びぐんぐんと勢いが増していくのを感じていた。
ピアスをあけている人。
として、真っ先に思い出したのはモデルの仕事でお世話になっているスタイリストだった。
彼は、耳に何個もピアスをあけていて、鼻にもピアスがはまっている。
彼ならきっと!!
そう思って、マネージャーに電話番号を聞いて彼に連絡をつけた。
ピアスがあいたのは、その次の日だった。
そして、水色の彼と再びピアスの話をしたのは、その一ヶ月後。
部活前で、部室で二人で着替えていた時。
「黄瀬君、ピアス、あけたんですか?」
「へ?ああ、そうっスよ。って、やっぱり気づいてなかったんスね。」
まるで、今まで気づいていなかった口調でそう言われたものだから、
もしかしたら、ピアスに気づいているけど、恥ずかしくてなかなか言えない、とか
そんな淡い妄想をしていた俺は、盛大にため息をつく。
ちなみに、一番に気づいたのは青峰っちで、それも俺を残念にさせた。
「・・・気づいていましたよ。」
練習に行こうとすると、いつもより低いトーンが聞こえる。
不思議に思って振り返ろうとしたら、顔面に何かが当たって思わずこけた。
その横を黒子っちが去っていく。
当たったものを確認すると、ビニール袋で、中には小さい箱が合った。
「指輪?」
「ピアスです。」
その箱にはリボンが巻かれていて、プレゼントのそれ。
思わず、思ったままを口にすると、頭をはたかれ、訂正された。
痛い。
「ピアス?」
こけたまんま、黒子っちをみると、彼はもうドアをあけて、部屋をでる後ろ姿が。
一瞬、その動きが止まって、
「黄瀬君に、あげます。」
それだけ言って、ドアが閉まった。
ドクドクと心臓がゆっくりと速さを増していく。
手が、少し震えていた。
うるさい心臓の音。
ゆっくりと過ぎていく時間。
ただ、箱を開けるという行為が、酷くゆっくりだった。
中には、赤いリング状のピアス。
そのピアスが一つだけ入っていた。
片耳にしかあけていないことを黒子っちは知っていたんだ。
自然と口元が緩んでしまう。
目元が熱くてたまらない。
心臓がきゅうっとしまって、苦しい、けど、すごく幸せ。
完全に弧を描く口元を腕で隠して、うずくまった。
ヤバい。
もうすぐ部活の始まる時間なのに、体が動きそうになかった。
「・・・黒子っちのばか。」
これ以上好きにさせないでくれ。
END
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落ちを考えないで話を描くのは私の悪い癖である。
ぐだぐだぐだですみません。
漫画とかにできたら、ピアスを渡すシーンとか書きたいなぁ・・・